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コグニザントジャパン ブログ

生成AIを企業に導入するための実践ガイド

生成AIの導入プロセスは他のテクノロジーの導入プロセスとは異なります。本記事では、この強力なテクノロジーを安全かつ効果的に導入するために企業が押さえておくべき10のポイントをご紹介します。


この1年間、生成AIは技術的ブレークスルーとして注目を集めてきました。ところが、誰もがその価値を認めているにもかかわらず、多くの企業が生成AIの使用に制限を設けるなど、慎重なアプローチをとっています。

しかし、傍観しているのは安全策と言えるでしょうか?遅れをとるという最大のリスクを負うことにはならないでしょうか?

私たちが実施した最近の調査によると、生成AIは2032年までに年間で最大1兆ドル規模の生産性向上をもたらす見込みです。導入を慎重に進める限り、生成AIはリスクをはるかに超えた価値を生み出します。企業は、生成AIを全面的に規制するのではなく、コストの上昇、セキュリティ、コンプライス、従業員エンゲージメントなど想定される多くの問題から組織を守るために、適切な使用ガイドラインを策定するべきです。

従来の技術導入プロセスを生かしながら、生成AIの持つ力を安全かつ効果的に活用するために企業が押さえておくべき10のポイントをご紹介します。

AI導入を成功させる10の方法

1. シンプルなアプローチでビジネスケースを作成する

生成AIは画期的なテクノロジーであるため、多くの場合、標準的なビジネスケースを適用することはできません。例えば、テクノロジーの妥当性と価値を説明するために時間とリソースを費やす必要はありません。

また、特定のユースケースでコスト削減を定量化する、生成AIに置き換えることが可能な技術スタックやプロセスを特定するなど、ビジネスケースに必要な根拠を省略することも可能です。現時点では、こうした根拠を示すための十分な情報や理解がないからです。

企業に必要とされるのは、実験と学習に重点を置いたシンプルなビジネスケースです。生成AIを安全かつ責任をもって使用するためのガイドラインを定め、どこでどのように効果的に使用できるかを迅速に特定することが必要です。

Do:

  • 知識、スキル、ケイパビリティを構築するためのパイロットプロジェクト、PoC、その他のプログラムを迅速に実施すること。
  • 実験の予算や初期投資を惜しまず、迅速にテストと学習を行うこと。

Don’t:

  • スタートを躊躇すること、不確実性を恐れること。
  • 冗長で複雑なビジネスケース作成プロセスにこだわること。

 

2. シンプルなユースケースから始める

Cognizant AmericasのEVP兼プレジデントである私の同僚、Surya Gummadiが最近の投稿で書いているように、「莫大な利益をもたらすユースケースを検討する前に、既存のビジネスプロセスに隠された価値を引き出すことから始めるべきです」。

生成AIがかなり高度なことをできるとしても、企業は比較的シンプルなユースケースを選ぶべきだと言い換えることができます。

例えば、コールセンターのエージェントのための知識データベースの構築や、開発者のルーチンタスクの自動化などです。こうした例は、社内に特化したユースケースであるため、手始めとして適しているでしょう。

一方、顧客向けアプリケーションに関しては、モデルが生成したコンテンツとユーザー間のインタラクションをコントロールしにくいため、組織をより大きなリスクにさらす可能性があります。

Do:

  • 将来のアプリケーションの基盤を構築する社内ユースケースに重点を置くこと。
  • ビジネスや顧客ニーズに合わせたソリューションを構築するためのデータを確保すること。

Don’t:

  • 顧客向けアプリケーションを最初に立ち上げること。

 

3. 過剰な技術評価を避ける

以前述べた通り、現在普及している生成AIツールのほとんどは同等の機能を有しています。ほぼ違いはないため、ハイパースケーラーや大手テクノロジー企業が提供するソリューションの評価に多大なリソースを費やすべきではありません。このような評価で、ツール間の大きな違いが明らかになる可能性は低く、またすぐに再評価を迫られることになるでしょう。

その代わりに、既存のパートナーシップに目を向け、ユースケースの予備設計から始めることを推奨します。新しいパートナーを選ぶ際には、信頼・調和性・実験といった非技術的な基準を考慮してください。

ニッチな生成AIプレイヤー、特にスタートアップ企業と提携する場合は、より入念な評価が必要になるかもしれません。テクノロジープロバイダが、ハイパースケーラーが標準とするレベルのセキュリティ、プライバシー、コンプライアンスを提供しているかどうかをしっかりと確認してください。

Do:

  • ハイパースケーラーと提携し、ユースケースの予備設計を行うこと。
  • パートナーを選ぶ際は、技術力に加えて、信頼・調和性・実験能力を重視すること。

Don’t:

  • テクノロジープロバイダのケイパビリティを入念に評価すること。
  • 十分な評価をせずにニッチプレイヤーやスタートアップ企業を信頼すること。

 

4. 外部専門家への投資

OpenAIの初期アドバイザーであり、Vianai SystemsのCEOであるVishal Sikka博士によれば、地球上の80億人のうち、AIシステムの運用方法を知っているのは20万人以下で、ChatGPTなどの生成AIツールの仕組みを説明できるのはわずか5万人にすぎません。ここで疑問が生じます。あなたの会社には、プロジェクトを進めるための十分な専門知識や人材が足りているでしょうか?

残念ながら、ほとんどの企業の場合、その確率は低いでしょう。プラットフォームを評価・導入し、企業全体で統合するための技術要素を特定するには、変革あるいはテクノロジーパートナーが必要となります。

Do:

  • 組織のリソースを評価し、外部のサポートを必要とする分野を特定すること。
  • テクノロジーを組織に導入するためのサポートを受けること。

Don’t:

  • 比較的シンプルなユースケースを実行する場合においても、それを「単独で」実行すること。
  • 将来の選択肢を狭めるような、排他的で柔軟性を欠いたパートナーシップを結ぶこと。

 

5. 適用可能なシステムアーキテクチャを設計する

生成AIの使用をサポートするには、まったく新しいエンドツーエンドのアーキテクチャと戦略を構築する必要があります。統合、データソーシングの実行、メンテナンスなど、重要なプログラム構成要素をすべて特定しなければなりません。

時間の経過とともに、組織は学習し、技術は成熟し、ユースケースは進化し、規制の状況は明らかになります。システムもそれに合わせて継続的に変化しなければなりません。企業には、ビジネスのニーズ、目標、ケイパビリティに合わせて変化し、市場や規制にも適応できる柔軟なフレームワークが必要となるでしょう。

Do:

  • 創造的かつ進歩的に考え、フレームワークを設計すること。
  • アーキテクチャには継続的な改善が必要だと理解すること。

Don’t:

  • 現代のテクノロジーに基づいて、硬直したエンドツーエンドのシステムを構築すること。
  • テクノロジーの進化を無視して、既存のプロセスに頼ること。

 

6. 新しいセキュリティポリシーの策定

生成AIは、生成AI特有のセキュリティリスクやコンプライアンスの問題を引き起こします。例えば AIモデルによって生成されたコンテンツは誰のものか?モデルの開発に使用されたデータはどうなるのか?生成AIを安全かつ倫理的に使用するためには、どのようなアクセスと管理が必要なのか?

残念ながら、私たちはまだ明確な答えを持ち合わせていません。だからといって、生成AIの使用を制限するわけではありません

既存のセキュリティとコンプライアンスの枠組みでは、これらの問題に対処できないため、企業は、多くの場合、テクノロジーパートナーと提携し、ポリシーと手順を策定し、プログラムのガイドラインを策定する必要があります。まずは、綿密な監視と制御が可能な社内アプリケーションに集中することで、リスクを低減することもできます。また、高いセキュリティレベルとプライバシーレベルに定評があるハイパースケーラーと提携することもできます。

Do:

  • 独自のポリシーや手順を策定すること。
  • データセキュリティに定評があるハイパースケーラーと提携すること。

Don’t: 

  • 既存のセキュリティやコンプライアンスポリシー、フレームワークに頼ること。
  • 変化やリスクを恐れて、生成AIの使用を躊躇すること。

 

7. 新しいKPIを設定し影響度を測る

生成AIのような新しいテクノロジーを導入する目標は、必ずしも初期段階でROIを達成することではありません。目標は、テクノロジーが現環境で機能し、価値と影響をもたらすことができると証明することです。

そのためには、特定のユースケースに特化した新しいKPIが必要です。プロジェクトのビジネスインパクトを判断するには、従来の指標だけでは十分でありません。例えば、社内のナレッジマネジメントを例に挙げてみます。従来のKPIは、ユーザーが答えにたどり着くまでに必要な画面数やクリック数だったかもしれません。しかし、生成AIの場合、指標を制限するべきではありません。情報のレビューに費やした総時間や、ユーザーが使用したリポジトリの数なども指標に含める必要があるでしょう。

成功したユースケースだけでなく、失敗したユースケースにも価値を見出すことができます。失敗したプロジェクトからは、テクノロジーの限界と障壁に関する重要なインサイトを得ることができます。成功したプロジェクトと失敗したプロジェクトの両方から重要な知見を得ることで、将来のテクノロジー活用についてより明確に理解することができます。

Do:

  • 時間をかけて生み出される価値に焦点を当てたKPIを設定すること。
  • ユースケースがうまくいかない場合は、次に進むこと。

Don’t:

  • 失敗したユースケースから学べる可能性を無視すること。

 

8. 早い段階から頻繁にコミュニケーションを図る

PoCやパイロットプロジェクトから全社的な実装に移行する段階では、フィードバックループが不可欠です。ソリューションとユーザーエクスペリエンスを進化・適合させ、最高の成果を達成するためには、フィードバック、特にユースケース評価に関するフィードバックを初期の段階から取り入れる必要があります。フィードバックの手法は、アンケート、スコアリング、簡単なユーザー評価などさまざまです。

主要な技術プログラムや変更管理計画では、コミュニケーションは見過ごされがちです。しかし、生成AIへの注目度の高さや、生成AIに関する誇大広告や誤った情報さえあることを考慮すると、生成AIにおけるコミュニケーションの重要度はより一層高いと言えます。

具体的には、たとえ従業員が生成AIを日常的に使用していないとしても、職務転換、プライバシー、偏見に対して従業員が抱く不安に対処することが不可欠です。このような懸念に対して明確かつ誠実なメッセージを送ると同時に、生成AIが従業員と企業双方にもたらす実用的な利点を強調することで、生成AIの迅速な導入と、導入後の強力なエンゲージメントを確保することができます。

Do:

  • すべての生成AIシステムの機能にフィードバックループを取り入れること。
  • 生成AIがもたらす影響に関して、明確かつ継続的なメッセージを全従業員に送ること。

Don’t:

  • 従来のフィードバック手法で生成AIの有効性を測ること。

 

9. 積極的な学習と開発

生成AIプログラムの成功は、従業員がどれだけ生成AIに慣れ、使いこなせるかにかかっています。従業員がツールの使い方を学習し、その学習の価値を理解するためには、包括的なトレーニングと能力開発プログラムが必要です。

導入、メンテナンス、設計に携わる従業員向けの実践的な技術コースと、生成AIの仕組みや使用法に関する全従業員向けの一般的な学習コースを用意するべきでしょう。

Do:

  • 実践的な学習コースと一般的な学習コースの両方を提供すること。
  • 学習・能力開発プログラムを変更管理計画と統合すること。

Don’t:

  • 学習と能力開発を、生成AIツールを直接使用する従業員だけに限定すること。

 

10. 反復学習

現時点では、すべてのAIプログラムを学習中心に展開するべきです。つまり、何が機能して、何が機能しないのかを理解するべきだということです。

ほとんどの企業は、大成功を収めたユースケースやアプリケーションを活用したいと考えていますが、そのためには、人々が生成AIに慣れ、どこに障壁があるのかを理解するまでの時間と努力と忍耐が必要です。

今日の生成AIから得られる価値は確かにあります。しかし、本当の価値は、過去のプログラムから学んだ知識を基に、注意深く、一貫して、計画的に学習を繰り返した結果にあるのではないでしょうか。

Do:

  • 学習と能力開発に重点を置くこと。
  • 反復学習を通じて価値を生み出すこと。

Don’t:

  • 成功例のあるユースケースから始めること。
  • 生成AIという進化する新しいテクノロジーに見切りをつけること。

 

生成AIで成功するために

初期段階とはいえ、生成AIがすべての業界の未来において不可欠な存在になることは明らかです。「傍観」を続ける企業は後れを取ることになるでしょう。

新しいテクノロジーの導入には不確実性がつきものですが、生成AIはリスクをはるかに超えた価値を生み出します。企業は、導入プロセスを通じて具体的な手法を採用することで、このリスクを軽減することができます。

今こそ生成AIと向き合う時です。なぜなら、生成AIの使用を躊躇したり否定したりすることが、最大のリスクとなり得るからです。

生成AIの詳細は、生成AIについてのウェブサイトをご覧いただくか、こちらまでお問い合わせください。

この記事は英語の原文を翻訳したものです。

原文はこちら:
A practical guide to introducing gen AI into the enterprise

This article was written by Scott TumSuden, Vice President & Global Managing Partner.



Scott TumSuden

Vice President & Global Managing Partner

Author Image of Scott TumSuden

Scott oversees strategy and growth for Cognizant's Retail division, leading relations with a top Fortune 30 client. A former Fortune 10 tech executive, he drives successful digital transformations in the industry.

Scott.TumSuden@cognizant.com




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